TVerはテレビ業界の起死回生となれるか

民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」
http://tver.jp/

東京の主要テレビ局が連携して「TVer」という動画視聴サイトを開始した。これはいままで各局が個別に行っていた「一週間見逃し配信」を統合したポータルサイトであり、発表によれば公開されたテレビ番組は“だいたい一週間”(*1)公開され、その間の無料視聴が可能となる。

一歩前進したことを評価したい

このサイトの個人的な評価を言えば「一歩前進したことは純粋に評価できる」と思う。

今までテレビ局は、ネットを活用するどころか、ネットのオープン文化を嫌悪し、時に敵対し、頑なにクローズドな有料空間を構築しようとしてきた。その過去を振り返れば、たとえ一週間とはいえ無料で映像を(ひとつのサイトで)確認できるようになったことは、内部の賢明な改革派が地道な調整を重ね、重たい腰を上げさせた結果なのだろうと推察する。よくやったなと。

ネットでほとんど話題に上がっていないのは気になるところではあるのだが、多少ひいき目にいえば、日本においてテレビの影響力はいまだに計り知れない。強力な放送網を持ち、低迷しているとはいえ資金力も人材も豊富だ。番組内のやり取りがネットのトレンドになることも多々あり、その映像を最も効率的に探すべきサイトのひとつが、これからは「TVer」になるわけだ。その底力を持ってすれば、認知度は時を追うごとに増す可能性は大いにある。

テレビ視聴の新スタンダードになれるのか

しかし、今後テレビの視聴方法として定着し、更にテレビ人気を高めるまでに至るかは、また別の話だ。ネットユーザーにとってみれば、「合法」か「違法」かなどはあまり関係がない。見たい時に見たいものを自由に見る。思いついた時、手の届く場所にある映像にアクセスするだけだ。つまり、この「TVer」がその一つに組み込まれるかどうかは、効果的なネット戦略をうち、いかに視聴者の習慣に食い込めるかにかかっている。

個人的にひとつ、Tverがネットユーザーの心を捉えるために重要だと感じるのは、「ネットでテレビを視聴する層が、どのような方法で映像にたどり着いているか」を詳細に分析し解明することだ。

たとえば素人ですら思い浮かぶ基本経路は、「テレビ番組 無料」でググッて出てきたサイト(映像へのリンク集)から直接映像に飛び、それを視聴するルートだ。これがもっとも簡易で確実な手段として利用されていると思うが、あくまで感覚的なものであって、実際のところは専門的な調査をしなければわからない。ただ、もしこれが正しい仮定だとすれば、そのリンク集サイトより上位表示させるか、広告枠で上位表示させるか、あるいはアフィリエイト等々を利用し、リンク集にピンポインに「TVer」へのリンクを表示してもらうか、そういうところからユーザーへ定着させてゆくのが妥当な戦略になると思う。

まあ、民放には自分たちの巨大な広告媒体があるのだから、CMで大々的に報じたり、情報番組で伝えるのだって良いが、テレビをネットで視聴する層が、果たしてテレビでテレビを見ているかどうかは甚だ疑問ではある。それよりは、ネット視聴者に人気のある番組を仮定し、その番組では毎回毎回しつこいほどに告知を打つくらいの決め打ちは必要になるだろう。

今後の展開が鍵になる

どちらにせよ、いまの「期間限定公開」では、テレビ番組のアーカイブとしては全く不十分と言わざるをえないし、すべての番組が公開されているわけでもないため、中途半端さは否めない。「すべての動画がそこにある」という期待感にはつながらない。さらに、無料でやる限り収益化も望めない。今後の展開として、半永久的にテレビ番組を保管するサービスへ移行したり、有料の領域を設ける考えがあるのかどうか(充実した検索機能を見れば、その可能性はありそうだが)が重要になるだろう。これにNHKや地方局がどうからむのか。その辺りも非常に気になる。

ともかく、いまはテレビ業界の小さくも偉大な一歩をたたえ、今後に期待しよう。


*1) あくまでも各局の個別に行なっている情報を集積しただけの玄関口であることによるにごし表現。現時点でのTVerの限界がよく表れている。

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