「家族のうた」が失ったもの
■「家族のうた」素晴らしかった。
エンドロールを見ながら泣いたドラマなんていつ以来だろう。しかし、放送開始から視聴率は低調のまま推移し、結果的には8話打ち切りに方針転換してしまったことが僕は残念でならない。
このドラマを途中で打ち切るという中途半端な対応は、近年稀に見る歴史的低視聴率という注目度を最大限に生かし切れないと思うのだ。
その理由を説明するにはまず、前提として「家族のうた」がクオリティの高い作品であるという事実を共有する必要がある。しかしそれはとても難しいので、今は第1話だけでも見てください。と言っておく。
■DVDが発売された時の展開を仮想してみる。
もし打ち切らずに放送していた場合、「低視聴率ばかりが注目されたけど、あれ実はめちゃくちゃ面白いんだよ」という並のドラマでは切り込めない訴求性を最大限に活かすことができたかもしれない。これは作品が本当に面白いものであればこそ、ネット上でも存在感を維持したまま広く伝播する可能性が生まれる。途中で打ち切ったことで、この訴求性は劇的に威力を失ってしまった。
なぜか。端的に二つある。クオリティを下げてしまったこと。そして視聴者を裏切ったことだ。
■制作者たちのもっとも理想とする演出の否定
今回の打ち切りというフジテレビの決定は、既に撮影が終盤に差し掛かった時期になって下されている。それはつまり、既にかなりの撮影が終了している時点から脚本と演出を練り直さなければならないということであり、いくら上手く短縮したところで、クオリティの低下は免れない。
たとえもし早い段階から打ち切りの方針が決まっていたとしても、制作者たちが企図したプロットは曲げられてしまった事実は変わりようがない。
■裏切られた制作者の意欲と視聴者の期待
どのような経緯で打ち切りが決まったのか、僕には想像すらできないけれども、制作者たちの意欲を削ぎ、クオリティを下げ、更に毎回楽しみにしている視聴者を裏切り、結果的には今後の販促の重要な要素を逃してしまった彼らの行動は、信頼も、金の卵も、みすみす手放す選択だったのだと僕は確信している。
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